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研究の概要

アトピー性皮膚炎の病態に関する研究

疾患の臨床研究による病態解明や新たな治療法の模索だけでなく、基礎的な研究であっても最終的には疾患の治療に貢献できることが、疾患に悩む患者さんと毎日対峙する臨床医が研究を行う際の大前提であると考え、以下のような研究を行っています。

プロジェクトリーダー/加藤則人

アトピー性皮膚炎の疫学、アトピー性皮膚炎の病態、炎症の寛解のメカニズム、乾癬の病態と治療

アトピー性皮膚炎の病態に関する研究

アトピー性皮膚炎の病態を解明して新たな治療法の開発に貢献することを目標に、これまでまったく注目されていなかった血小板の役割に関する研究、炎症メディエータによる単球の活性化と慢性炎症の機序に関する研究、樹状細胞の役割に関する研究、表皮バリア機能に関する研究など、幅広いテーマで研究を行っています。

皮膚炎症反応の収束のメカニズムに関する研究

炎症反応には、活性化する反応と並行してそれを調節する反応が起こっていることが明らかになってきました。
悪化を続けていたアトピー性皮膚炎の皮疹が,ある時を境に急によくなる現象は、まさにこの炎症を調節する反応が活性化する反応を上回った結果だと考えられます。炎症を調節する反応(生体が持つ自然治癒力)を何らかの方法で誘導することができればアトピー性皮膚炎を治癒に導けると考え、精力的に研究を行っています。
また、アレルゲンに対する減感作療法 (Specific Immunotherapy)によるアトピー性皮膚炎の治療に関する臨床研究を計画しています。

アトピー性皮膚炎の疫学調査

10年以上にわたって京都府のある自治体の住民を対象にアトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の疫学調査とアトピー疾患の予防に関する介入研究、小児期・成人期アトピー性皮膚炎の予後に関与する因子の解析など、フィールドワークから研究室での実験では得られない重要な事実を明らかにしようとしています。

腫瘍免疫に関する研究

免疫反応を応用したメラノーマの治療法の開発を目的として、これまで樹状細胞を用いたワクチン療法に関する臨床研究を精力的に行ってきました。現在は、ドイツ・ボン大学臨床薬理学教室と共同で、遺伝子治療と免疫療法を融合させた新たな治療法の開発に関する基礎研究を行っています。

プロジェクトリーダー/竹中秀也

皮膚創傷治癒機構の解析、難治性皮膚潰瘍の新規治療法の開発

現在の主要な研究テーマは、糖尿病性潰瘍などの難治性皮膚潰瘍に対する治療法の開発で、糖尿病マウスを用いた基礎実験および臨床研究を行っています。特に、皮膚創傷治癒において最も重要な因子の一つである血管新生に焦点を当て、薬剤の投与、細胞移植やヘッジホッグの遺伝子導入などの治療による骨髄由来血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell, EPC)を介した血管新生への影響を、その治療効果とともに検討してきました。骨髄からは、この他にマクロファージなどのいわゆる炎症細胞以外に、線維芽細胞、筋線維芽細胞、平滑筋細胞や表皮細胞などの前駆細胞が動員されることが知られるようになっており、これらの細胞の動態に着目し、研究を発展させています。また、臨床研究では、自己末梢血単核球や脂肪組織由来間質細胞を用いた難治性皮膚潰瘍に対する新しい細胞治療を開発し、その有用性を検討しています。

プロジェクトリーダー/益田浩司

接触皮膚炎の病態に関する研究 蕁麻疹の病態に関する研究

皮膚接触過敏反応(CHS) は、経表皮的にハプテンが取り込まれることによって感作および惹起される、おもにT細胞により引き起こされる皮膚の炎症反応で、接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎など、皮膚科外来患者の7割を占める湿疹・皮膚炎群の病態のプロトタイプである。感作相では表皮内に侵入したハプテンをランゲルハンス細胞が取り込み、所属リンパ節へと遊走してナイーブT細胞への抗原提示が行われる。感作成立後にハプテンを再投与した際に炎症反応が皮疹として認められる。特にこの炎症反応がどのように終息していくかという点に着目して研究しています。

プロジェクトリーダー/北川朋子

男性型脱毛症の病態解明に関する研究

これまでに我々は、男性の男性型脱毛症(以下AGA)の病態解明のため、「毛乳頭細胞におけるWntとアンドロゲンの作用機構」について研究してきました。Wntは、形態形成や細胞分化に関与する細胞間シグナル伝達因子の1つであり、毛包形成を促進します。反対に、アンドロゲンは部位特異的に毛の成長を退行させることが知られています。アンドロゲンの男性型AGAの病態への関与を解明するために、男性のAGA患者と健常者より採取した毛乳頭細胞を角化細胞と共培養して、毛乳頭依存的な角化細胞の増殖に対するアンドロゲンの作用を検討したところ、AGA由来毛乳頭培養系においてのみ、Wnt3aによる角化細胞の増殖促進効果がアンドロゲンによって有意に抑制されました。そこで、毛乳頭細胞に存在しているアンドロゲンレセプターを介したシグナル伝達が角化細胞の増殖に関わっていると考え、この増殖抑制効果がアンドロゲンレセプターの発現の有無に起因しているかを検討したところ、その発現量はAGA由来の毛乳頭細胞の方がAGAでない健常者の毛乳頭細胞と比べて有意に高いことがわかりました。また、毛乳頭細胞内でのアンドロゲン受容体とWntの下流因子の共核移行はAGAにおいて有意に亢進し、AGAと健常者ではアンドロゲンレセプターの性質が異なることを明らかにしてきました(Kitagawa T et al. J Clin Endocrinol Metab 2009)。
そこで我々はアンドロゲンレセプターの発現量の調節機構が、AGAの発症、さらには発症後の進行速度の重大な決定要素ではないかと考えました。また、AGAは遺伝する傾向があることはよく知られています。この事を考え合わせると、アンドロゲンレセプター遺伝子の発現調節が遺伝的素因で決定されており、これがAGAの罹患性に関わっているのではないかと考えられます。遺伝的素因を含んだ発現調節メカニズムとしては、まず、プロモーター領域の遺伝子多型が考えられます。そこで我々は、アンドロゲンレセプターの発現制御が男性型脱毛発症の原因の一つであると仮説を立て、男性型脱毛患者および健常者由来の頭部毛乳頭細胞におけるアンドロゲンレセプター遺伝子のプロモーターの遺伝子多型に関する研究を行っています。 AGAによる生活の質の低下は、AGA治療薬の高い需要が証明しています。また、男性型脱毛症は男性の疾患と思いがちですが、女性にも男性同様の頻度で発症する疾患です。我々は男性および女性のAGAの病態形成におけるアンドロゲンレセプターを介する作用について研究しています。

皮膚科学教室